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長いお別れ [家族の事]

文春文庫:中島京子「長いお別れ」を一気に読み終わった。

エピソードの一つひとつに思い当たるものがあり、また経験したものがあり、そして、父の現状とは比べ物にならないほど大変な介護の現状を知らされたり…。


心の中を探られて、自分はどうだろうと省みて苦しい思いも味わった。


でも、何より何より、何よりも、改めて、記憶と分別を失って行く自分自身にどれほど父は苦しみ悩んだだろうと思わされて辛かった。


引き込まれて読み進んだが、最後の最後にミスター・グラントと崇の会話に、涙が止まらなかった。そうか。亡くなったのか。そうだ、亡くなるのだ。いつか。いつか。わからないけれど、確実にその日はやってくるのだ。


父は、私たちに長いお別れ『Long good-by」を教えてくれているのだと思い当たった。

少しずつ少しずつ記憶を失い、ゆっくりとゆっくりと私たちの世界から遠ざかって行く。それでも、このなかに記されているように、何かを忘れてわからなくなってしまっても、父は父以外の誰かに変わってしまったわけではない。


幼い時の覚えている元気で前向きで意欲的な父も、思春期の苦しみの時に語ってくれた思慮深く尊敬していた父も、大人になって一人前に扱ってくれて嬉しかったあの時の愛情深い父も、結婚式の時に「宝物だよ」と言ってくれた父も、歳老いて引退して近くに越して来て、心細さや不安を口にするようになった父も。


全ての父が今の父の中にあるのだ。


富良野1本.jpg


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