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雨降りの日 [想い出いろいろ]

久しぶりに雨が降った。

ずっと晴れの日が続いていて、洗濯物がよく乾いたし、青空が本当に気持ちよく広がって、晩秋とはいえ日差しが眩しくて嬉しかった。

でも、この火曜日、夜半から雨の音がしていて、朝は薄暗い空から雨が降り続いていた。しとしとと降り続いていた。


雨が好きだ。

私にとって、雨は長い冬が終わって春が来たという知らせだ。

ようやく雨が降って黒い土が見え始め、軒先に下がる氷柱が溶け始める。

春が来たしるしだ。


一日中部屋の中で仕事をして、夕方用があったので雨の中を歩いた。

傘をさして歩きながら、雨の日の思い出を頭の中で一つ一つ思い巡らした。

幼い頃初めて新しい傘を買ってもらった時のこと、雨が降っていないのにその傘をさして外に出て雨が降るのを待っていたこと。

10代の頃、心の中に様々なやるせなさが募って、土砂降りの中を傘もささずに歩いて帰ったこと。おかげですっかりずぶ濡れになってセーラー服のスカートのひだが無くなってしまった。そして心の中のもやもやも一緒になくなった。玄関で足元に水溜りができるのを眺めながら自分に大笑いしたあの日。

駅まで夫を迎えに行く雨の日。車だったら迎えに行く意味もあろうに、傘を持っててくてくと駅まで迎えに行く。駅の入り口で改札から夫が出てくるのを待つ間が楽しい。

この間の雨は、故郷をも思った。

あの山に囲まれた小さな町にも雨は降っただろうか。

土の香りと雨の匂いが頭の中に思い浮かぶ。


この季節、しなくてはならないことに日々追われているけれど、雨は頭も体も心も一休みさせて、静かに深く思い巡らす時を与えてくれた。

会うことはできない…見ることが出来ない…話すことも声を聞くこともできない…忘れることが出来ない大切な人たちのことも。


夕方曇り空.jpg


そして雨はあがった。


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