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モミの香りと紅玉 [想い出いろいろ]

久しぶりの昔話。

…でも、秋になると昔話がよく出てくるなあ。ま、いいか。

 北海道の短い夏が過ぎると、秋の気配もあっという間で「ほとんど冬」という季節がやってくる。雪虫が飛び、遠くの山の頂が白くなる頃だ。

 家々では冬の支度に追われ、うちだって窓のビニールの覆いをかけたり、毎日毎日薪割りをして家の外壁に積んで行く。夏でも出しっ放しだったストーブの煙突を掃除し、つなぎ目を確かめていつでも使えるようにしておくっていうか、もう使い始める。

 家の中では、布団を変え、衣を変える。夏に着たおとっときの半袖もひらひらのスカートも(ああ、懐かしい!綺麗な茶色のふんわり袖のブラウスとクリーム色のプリーツのスカート!)タンスの中で長い眠りにつくのだ。代わりに分厚いセーターと分厚いズボン、分厚い靴下、ジャンパーとマフラーと手袋と帽子が出てくる。靴だって、可愛いサンダルからごつい冬靴に変わる。でも、思い出して見たら、子供の頃はいつも長靴だったなあ。スキーだって、長靴にゴムを引っ掛けて履くスキーやったなあ。……古っ!!

 なんとも言えない寂しく暗い空と冷たい風がやって来て、町も山も川も、私たちさえも茶色と灰色に変えて行く。

 

でも、その季節に父の実家からリンゴやミカンや柿が送られてくるのだ。父の実家は、その頃まだ果樹園をしていたので、りんごも大きな木箱のモミの中に、紅玉やゴールデンデリシャスや王林がいっぱい入って送られてくるのだ。本当に楽しみだった。父が釘抜きを持って来て箱を開けると、なんとも言えない香ばしい香りがして、一面のモミをそっとかき分けると真っ赤な紅玉が顔を出す。誇らしげな父が、早速そのリンゴを磨いて、ナイフで一口ずつ切って私たち子どもの口に入れてくれる。甘酸っぱくて香り高いその味は、今でも忘れられない。

短い秋は、紅玉の香りと味とともにやって来て過ぎて行くのだ。


流れる夕やけ雲.jpg

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